腕時計の磁気抜きは自分でもできる?失敗しない手順とプロへの判断基準

腕時計の磁気抜きは自分でもできる?失敗しない手順とプロへの判断基準

この記事の監修者

OURO事業部 部長
辻野 雄弥

プロフィール
OURO創業期より事業に参画。国内外の営業基盤をゼロから構築し、現在20カ国以上に広がる販売ネットワークの構築および拡張を実現。
年間取引高1600億円規模における取引判断を主導し、真贋判定、相場判断、販売先選定を含む意思決定を統括。商材面においても定番モデルから希少モデルまでの幅広い取引経験を有し、営業および事業成長を現場起点で牽引している。
https://brandouro.com/column/reviewer_yuuya_tsujino/

最近なぜか、お気に入りの腕時計の時間が狂うことはありませんか?

落としたわけでもないのに時間が進んだり遅れたりする場合、それは「磁気帯び」が原因かもしれません。

私たちの身の回りには、スマートフォンやパソコンといった強い磁力を出す製品が溢れています。

金属パーツで構成される腕時計は、こうした磁気の影響を非常に受けやすい精密機械なのです。

本記事では、磁気帯びの確認方法から自分でできる磁気抜きのコツ、プロに任せるべき判断基準まで詳しく解説します。

そもそも腕時計の「磁気帯び」とは?原因や症状をチェック

時計の精度が急に落ちたとき、真っ先に疑うべきなのが「磁気帯び」という現象です。

磁気帯びとは、腕時計の内部パーツが磁石のように磁力を持ってしまう現象を指します。 

本来は自由に動くべき金属部品同士が磁気でくっついてしまい、時計の精度を著しく狂わせてしまうのです。

まずは、磁気帯びの原因や症状を詳しく見ていきましょう。

なぜ腕時計が狂う?身近に潜む磁力の原因

腕時計の内部には、時を刻むための「テンプ」と呼ばれる小さな車輪のようなパーツが組み込まれています。

このテンプの周辺にある「ヒゲゼンマイ」が磁石のようにくっついてしまうのが、磁気帯びの一例として挙げられます。

ヒゲゼンマイが磁力の影響を受けると、本来の規則正しい振動ができなくなります。

その結果、腕時計の精度が大きく乱れてしまうのです。

現代の生活環境では、目に見えない磁石がいたるところに存在しています。

スマートフォンのスピーカーやノートパソコンのキーボード、さらにはバッグのマグネット留め具などが代表例です。

これらの製品に腕時計を密着させてしまうと、瞬時に内部パーツが磁化してしまいます。

また、電池で動くクォーツ時計も、磁気の影響と無縁ではありません。 

内部の針を動かすモーターは磁石の力を使っているので、外からの磁力に触れると動作が一時的にストップしてしまうこともあるでしょう。

磁気帯びを疑うべき腕時計の遅れ・進みのサイン

磁気帯びの最も分かりやすい症状は、突然1日に数分単位で時間が狂い始めることです。

機械式の腕時計が磁気を帯びると、内部のバネがくっついて、本来よりもせわしなく動くようになります。 

その結果、腕時計の針が実際の時間よりも早く進んでしまう現象が起きるのです。 

一方で、磁力がブレーキのように働き、逆に腕時計が遅れてしまうケースも珍しくありません。

衝撃を与えた記憶がないのに精度が落ちた場合は、故障よりも磁力の影響である可能性が高いといえます。

放置しても自然に治ることはないので、早急な対処が必要でしょう。

方位磁石で簡単にできる!磁気帯びのセルフ確認方法

自分の腕時計が磁気を帯びているかどうかは、方位磁石(コンパス)を使えば自宅で簡単に判別できます。

まず、方位磁石を平らな場所に置き、針が安定するまで待ちましょう。

次に、腕時計をゆっくりと方位磁石に近づけてみてください。

もし腕時計を近づけた際に方位磁石の針がピクッと動いたり、腕時計を追いかけるように回転したりすれば、磁気帯びの目安のサインといえるでしょう。

本来、腕時計は方位磁石の針を動かすほどの磁力は持っていません。

針が大きく振れるほど強い磁力を帯びている証拠なので、磁気抜き作業が必要な状態と判断することができます。

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磁気抜きは自分でもできる?セルフ作業の手順と注意点

腕時計の磁気帯びは故障ではないので、専用の道具さえあれば自分自身の手で解消することができます。

ただし、精密機械を扱う以上、守らなければならないルールや手順が存在します。

ここでは、セルフ磁気抜きの具体的なやり方と、失敗を防ぐための重要なポイントを解説します。

市販の磁気抜き器を使った正しい手順

磁気抜きは、数千円で購入できる「磁気抜き器」を使えば自分で行うことが可能です。

まず、磁気抜き器のスイッチを押し、発生した磁界の中に腕時計を置きます。

スイッチを押したまま、腕時計をゆっくりと装置から遠ざけていくのが基本の動作です。

このとき、腕時計を装置から30cm以上離してからスイッチを切るようにしてください。

装置のすぐそばでスイッチを切ってしまうと、逆に強い磁気を与えてしまう恐れがあります。

正しい手順で行えば、わずか数秒で磁気抜きは完了します。

再度方位磁石で確認し、針が動かなくなれば成功です。

失敗すると逆効果!作業時に絶対にやってはいけないこと

セルフ磁気抜きで最も多い失敗は、スイッチを操作するタイミングを間違えることです。

腕時計が装置の近くにある状態でスイッチを切ってしまうと、装置が発する強力な磁力をそのまま腕時計に焼き付けてしまいます。

作業前よりも重度な磁気帯びを引き起こすケースがあるので、操作には細心の注意が必要です。

また、100円ショップなどで売られている強力な磁石を近づけて、腕時計の磁気抜きを試みようとする人も中にはいるでしょう。

しかし、磁気抜きには「交流磁界」という特殊な磁力の変化が必要であり、単なる磁石では状況を悪化させるだけです。

本来の磁気を抜くどころか、逆に強く帯びさせてしまう恐れがあります。

必ず腕時計専用、あるいは精密機器用の磁気抜き器を使用するようにしてください。

セルフ磁気抜きが可能な時計と避けるべき時計の判別基準

比較的安価なモデルや、普段使いのクォーツ時計であれば、セルフ作業でも対応できるといえます。

しかし、長年愛用している高級ブランドの腕時計や、資産価値が高い特別な腕時計については、自分で行うのは避けるべきでしょう。

万が一、作業ミスで内部パーツに悪影響が出た場合、高額な修理費用が発生するリスクがあるからです。

また、最近では強力な磁気にも耐えられるよう設計された「耐磁時計」も増えています。 

こうした特殊なモデルで精度に異常が出ている場合は、磁気以外の故障(パーツの摩耗や油切れ)を疑うべきです。 

磁気抜きの道具で解決しようとせず、速やかにプロの診断を仰ぐのが賢明な判断といえます。

プロに任せたほうが安心!お店に依頼すべきケースとメリット

自分での作業に少しでも不安を感じる場合や、大切な高級時計を扱う場合は、プロの力を借りるのが最も賢明です。

時計店では単に磁気を抜くだけでなく、専門家ならではの視点で腕時計の状態をチェックしてくれます。

お店に依頼することで得られる安心感や、具体的なサービス内容について見ていきましょう。

磁気抜きだけじゃない?プロが行う精密な点検の内容

時計店や修理工房に依頼する最大のメリットは、磁気抜きと同時に「歩度測定」を行ってもらえる点にあります。

歩度測定とは、専用のテスターを使用して腕時計の現在の精度を数値化する作業です。

プロにお願いすれば単に磁気を抜くだけでなく、その作業によって精度が元に戻ったかまで厳密にチェックしてくれます。

さらに、プロ用の強力な磁気抜き器は、家庭用のものよりも深部まで磁力を除去できるのが特徴です。

腕時計の外装だけでなく、ムーブメントの芯まで確実に磁気抜きできるので、再発のリスクも抑えられます。

確実性を求めるのであれば、プロの機材と技術に頼るのが一番だといえるでしょう。

内部故障の可能性も!磁気抜きで直らない場合の対処法

磁気抜きをしても時間が狂い続ける場合は、磁気以外のトラブルが発生しているサインです。

例えば、腕時計をぶつけた衝撃でパーツが歪んでしまったり、内部の潤滑油が乾いて摩擦が大きくなっていたりすることがあります。

これらは磁気抜き器では決して直せません。

プロに依頼すれば、「磁気抜きで改善しなかったので、オーバーホール(分解掃除)が必要になります」など、その場で的確なアドバイスがもらえます。

自分で延々と磁気抜きを繰り返して時間を浪費するより、プロにお願いするほうが、故障の早期発見につながるメリットが大きいといえるでしょう。

気になる料金と作業時間の目安

店舗での磁気抜きは、驚くほどリーズナブルでスピーディーに行われることが一般的です。

作業時間も5分から10分程度で済むので、買い物ついでに立ち寄ることも可能です。

家電量販店の時計コーナーや、デパートのサービスカウンターでも対応してくれるケースも多いでしょう。

ただし、高級ブランドの正規カスタマーセンターに送る場合は、送料や診断料が発生し、数週間の納期がかかることもあります。

まずは身近な時計修理専門店で、その場で対応可能かどうか相談してみるのがおすすめです。

大切な腕時計を守るために!日常でできる磁気帯びの予防策

一度磁気を抜いて精度が戻っても、これまでと同じ生活習慣を続けていれば、再び磁気帯びを起こしてしまう可能性があります。

大切な腕時計を長く愛用するためには、磁気を抜くことよりも、寄せ付けない意識が重要です。

そこで最後に、日常でできる磁気帯びの予防策を紹介します。

スマホやPCから5cm以上離す習慣をつけよう

磁気の力は、距離が離れるほど急激に弱まるという特性を持っています。

目安として、磁気を発する製品から5cm以上離すだけで、磁気帯びのリスクは大幅に減少します。

スマートフォンの上に腕時計を重ねて置くような習慣は、最も危険な行為なので今すぐやめましょう。

デスクワーク中も、ノートパソコンのスピーカー部分やパームレスト部分に腕時計を近づけすぎないように意識してください。

たった数センチの距離を保つだけで、腕時計の健康寿命は格段に延びます。

保管場所を決める際も、電化製品から少し離れた棚などを選ぶのが理想的です。

要注意!身近に潜む磁気の強いアイテム一覧

私たちの身の回りには、意外な場所に強力な磁石が隠れています。

例えば、タブレット端末のカバーや、ワイヤレスイヤホンの充電ケースは要注意です。

これらは強力なネオジム磁石を使用していることが多く、接触させると一瞬で腕時計が磁化してしまいます。

他にも、健康磁気ネックレスやバッグのマグネットボタン、冷蔵庫のドアパッキンなども盲点になりやすいポイントです。

特に女性の場合、ハンドバッグの留め具付近に腕時計を近づけないよう注意が必要です。

磁気に強い耐磁時計という選択肢を検討する

「どうしても仕事で強力な磁場にさらされる」という場合は、最初から磁気に強い耐磁時計を選ぶのがベストです。

時計ブランド各社は、シリコン製のヒゲゼンマイを採用するなど、磁気に反応しない素材の開発に力を入れています。

こうしたモデルを選べば、磁気による悪影響を心配する気持ちも和らぐでしょう。

最近では、厳しい耐磁基準をクリアした耐磁性能の高いモデルが数多く登場しています。 

自分のライフスタイルに合わせて、こうした磁気に強いスペックの腕時計を選び直すのも一つの手です。 

磁気抜きの手間から解放されるだけでなく、日常のあらゆるシーンで安心して愛用できるパートナーになってくれるでしょう。

磁気抜きを正しく理解して腕時計の精度を自分で守ろう!

腕時計の精度が乱れる原因として、意外と見落とされがちなのが磁気帯びによる影響です。 

方位磁石を使って自分で原因を特定できれば、まずは落ち着いて次のステップを考えられます。 

軽度な磁気ならセルフケアで解決できますが、判断に迷う場合や確実な診断を求めるなら、プロに相談するのが最も安全な選択肢です。 

専門店であれば磁気抜きだけでなく、内部の細かな不調まで見抜いてくれるので、大切な時計の寿命を延ばすことにもつながります。 

まずは、身近なデジタル機器から腕時計を遠ざける工夫を取り入れながら、お気に入りの腕時計を末永く守っていきましょう。

この記事のまとめ
  • 腕時計の時間が急に狂う原因は身近な磁気帯びの可能性が高い
  • 方位磁石を使えば自宅でも磁気帯びを簡単にセルフ確認できる
  • 市販の磁気抜き器で対処可能だが操作ミスは逆効果になるので要注意
  • 高級時計や判断に迷う場合は精密点検もできるプロへの依頼が安心
  • スマホやPCから5cm以上離す日常習慣が最も効果的な予防策になる