
OURO事業部 部長
辻野 雄弥
プロフィール
OURO創業期より事業に参画。国内外の営業基盤をゼロから構築し、現在20カ国以上に広がる販売ネットワークの構築および拡張を実現。
年間取引高1600億円規模における取引判断を主導し、真贋判定、相場判断、販売先選定を含む意思決定を統括。商材面においても定番モデルから希少モデルまでの幅広い取引経験を有し、営業および事業成長を現場起点で牽引している。
https://brandouro.com/column/reviewer_yuuya_tsujino/
高級腕時計の風防に使われている「サファイアガラス」という素材をご存じでしょうか。
傷がつきにくく透明度も高いことから、資産価値のある時計選びでは欠かせないポイントです。
本記事では、サファイアガラスの特徴からメリット・デメリット、価格相場まで詳しく解説します。
サファイアガラスとは、高純度のアルミナ(酸化アルミニウム)を人工的に巨大な結晶へと成長させた素材です。
宝石のサファイアと同じ化学的構成をしていますが、天然の宝石ではなく工業的に製造されています。
正式名称は「サファイアクリスタル」ですが、腕時計の風防として使用される際には「サファイアガラス」と呼ばれるのが一般的です。
また、腕時計に用いられる風防素材にはアクリルやミネラルガラスもありますが、傷つきやすさや衝撃に弱いという欠点がありました。
これらの問題を解決する素材として登場したのがサファイアガラスであり、現在では高級時計の風防として定番の素材となっています。
サファイアガラスが評価される理由は、見た目の美しさだけではありません。
硬さによる傷の付きにくさ、熱や摩耗への強さ、透明度の高さなど、日常の使い勝手に直結する性質を複数持っています。
ここでは、これらの特徴4つについて解説します。
サファイアガラス最大の強みは、非常に硬いことです。
硬さの目安として有名なモース硬度では9とされ、ダイヤモンド(10)に次いで硬いです。
別指標のビッカース硬度でも高い水準が示され、材料としてはセラミックに近い硬さだと説明されることもあります。
また、日常生活で触れやすい砂ぼこりには石英(モース7)が含まれるため、サファイアガラスは、ミネラルガラスや一般的な強化ガラスよりも擦り傷が入りにくいと言われます。
バッグの金具、デスク作業、袖口の擦れなどで細かな線傷が付きにくく、風防の透明感を保ちやすい点は、長く使う腕時計にとって大きなメリットです。
サファイアガラスは、耐熱性にも優れており、約2,000℃まで耐えることができます。
そのため、工業分野では高温にさらされる装置の観察窓などに使われる例もあるほどです。
腕時計の場合にも、日常の熱(夏場の車内、入浴、調理中の蒸気など)で素材自体が変形しにくいため重宝されています。
さらに、熱だけでなく、紫外線や薬品への耐性も期待でき、長期使用でも美しい外観を維持できるでしょう。
ただし、耐熱性が高くても急激な温度変化(熱衝撃)にはそれほど強くないため、極端な環境での使用には注意が必要です。
摩耗に強いことも、サファイアガラスの大きな特徴。
硬度が高い素材なので表面が削られにくく、細かな擦れによる曇りや白っぽい摩耗痕が出にくいです。
日々の使用で風防がくすんで見えると、時計の印象は一気に古く見えがちですが、サファイアガラスなら透明感を保ちやすく、清潔感のある外観を維持しやすいでしょう。
また、腐食しにくく薬品にも溶けないという優れた耐薬品性も備えています。
汗や皮脂、日常的な汚れによる劣化が起こりにくいため、毎日身につける腕時計の風防素材として適しています。
サファイアガラスは透明度が高い点でも評価されています。
製造過程で不純物を徹底的に取り除いているため、気泡などが少なくクリアに見えます。
風防の透明感が高いため、文字盤の色やインデックスの立体感が際立ち、時計の高級感も引き立つでしょう。
また、反射を抑えるために無反射(AR)コーティングを施すモデルも多く、光の映り込みを減らして視認性を高める工夫がされています。
屋外や室内照明の下で時間が読み取りやすいかは、素材だけでなくコーティングの有無でも変わるため、購入時は店頭で角度を変えながら確認すると安心です。
サファイアガラスは傷に強い反面、万能素材ではありません。
特に衝撃や力のかかり方によっては欠けたり割れたりすることがあります。
ここでは、日常使いで知っておきたい代表的なデメリットを2つ紹介し、上手な付き合い方もあわせて解説します。
サファイアガラスは硬度が非常に高い反面、圧力が一点に集中した時や急激な衝撃には弱いです。
日常的な擦り傷には強くても、固いアスファルトの上に落としたり、デスクの角に強くぶつけたりすると割れてしまうこともあります。
硬度の高い素材は表面が傷つきにくい反面、粘りとは別の性質なので、衝撃に対して万能ではありません。
登山やスポーツ、現場作業などぶつける可能性が高い環境で使用する場合は、衝撃に強い素材(ミネラルガラス等)も検討すると良いでしょう。
傷の強さだけでなく、衝撃耐性も重視すると選びやすくなります。
サファイアガラスが割れた場合、その割れ方は通常のガラスとは大きく異なります。
部分的に小さくヒビが入るのではなく、派手に砕けてしまうケースが多いです。
硬度が高い素材は衝撃のエネルギーを分散させにくく、限界を超えると全体に破損が広がりやすい傾向があります。
そのため、一度割れてしまうと時計本体に大きなダメージを与えるリスクがあることを知っておきましょう。
風防は時計内部を守る重要部品なので、欠けやヒビを放置すると、防水性の低下や内部への異物侵入につながる恐れがあります。
修理費用も高額になりやすく、サファイアガラスを含む外装の故障は、保証に含まれないことがほとんどであるため、注意が必要です。
サファイアガラスは、一般的なガラスや樹脂素材と比較して高価な素材です。
高価な理由としては、まず製造には2000℃を超える超高温環境が必要であり、大きな結晶を作ること自体が非常に難しい技術であるためです。
さらに、硬度が高いため加工にはダイヤモンド工具を使った削り出しが必須となり、レーザー切削や専用研磨機によるポリッシュ工程も必要となります。
そのため、仕様・厚み・形状・枚数で価格は大きく変動しますが、試作品1枚で1万〜2万円程度になることが多いです。
一般的な強化ガラスと比べると高くなりますが、なぜ高いのかを理解しておくと納得して選びやすくなるでしょう。
サファイアガラスは腕時計の風防で有名ですが、用途はそれだけではありません。
硬さ、耐熱性、摩耗や薬品への強さ、透明度といった性質が求められる場面で、工業から電子機器まで幅広く検討されています。
代表的な採用例を見て、どんな強みが評価されているのかを具体的にイメージしましょう。
腕時計のパーツとして使用されているのが、文字盤を守るカバーガラス(風防)部分です。
風防は、常に外部からの擦れや汚れにさらされるため、透明感を長く保てる素材が好まれます。
サファイアガラスは傷が付きにくく、見た目の劣化を抑えやすいことから、高級時計だけでなく中価格帯の腕時計でも採用が増えています。
反射を抑える無反射コーティングが組み合わされることも多く、視認性や高級感を高める役割も担っていると言えるでしょう。
サファイアガラスは、青色発光ダイオードなどの高輝度LED基板としても使用されています。
発熱に耐えられる耐熱性と、成膜用基板としての優れた特性を兼ね備えているためです。
LEDが発する熱に対して変形や劣化を起こしにくく、安定した性能を長期間維持できます。この用途は現在、サファイアガラスの最大の利用分野の一つとなっており、照明機器やディスプレイなど幅広い電子機器に貢献しています。
サファイアガラスは、iPhoneをはじめとするスマートフォンにも採用されています。
高い耐傷性が評価され、モデルにもよりますが、iPhoneでは背面カメラのレンズ部分にサファイアガラスが使用されており、Apple Watchのディスプレイ保護にも使われています。
さらに、サファイアガラス製のスクリーンプロテクターも市販されており、スマートフォンの画面を強力に保護する製品として人気です。
サファイアガラスは、過酷な環境で使用される窓材としても活躍しています。
高い強度を活かして高圧タンクの覗き窓に使用されているほか、耐食性・耐熱性を活かして半導体装置や化学プラントの観察窓にも使用されています。
地中や海中といった高圧環境から、宇宙空間のような極限環境まで対応できる数少ない素材です。
小惑星探査機「はやぶさ2」のサンプル保管容器にもサファイアが採用されるなど、最先端の科学技術分野でも欠かせない存在となっています。
腕時計のサファイアガラスは、素材が同じでも形状によって印象やコストが変わります。
フラット形状だけでなく、曲面を持たせたカーブ型や立体感のあるドーム型などがあり、見え方や雰囲気は多様です。
ここではフラット形状に加えた、代表的な2種類を押さえ、選ぶときのチェックポイントを整理します。
カーブ型のサファイアガラスは、風防の表面に緩やかな曲面を持たせたタイプになります。
正面から見たときはすっきりしつつ、角度をつけると光の反射や文字盤の立体感が強調され、上品な雰囲気を作りやすいのが特徴です。
曲面にすること自体は技術的に難しくありませんが、硬度の高いサファイアガラスをカーブさせるには非常に高い加工技術が求められます。
そのため、カーブ型を採用したモデルは価格も高くなる傾向があります。
購入時は、店頭で腕を動かしながら反射の出方や時間の見やすさを確認すると、より自分に合ったものを選択できるでしょう。
ドーム型のサファイアガラスは「ボックスサファイア」とも呼ばれ、半球状に中央部分が緩やかに盛り上がった丸みを帯びた形状が特徴です。
20世紀中頃に主流だったプラスチック風防の雰囲気を再現しており、柔らかく温かみのある印象を与えます。
しかし、光の屈折で角度によって文字盤がわずかに歪んで見えることもあり、これは味として好まれる一方、視認性重視の人には好まれません。
無反射コーティングの有無も含め、実物を見て「読みやすいか」「反射が気にならないか」を確認するのがおすすめです。
ここからは、サファイアガラスを調べるときによく出る疑問をQ&A形式で整理します。
欠点や価格の考え方、有名ブランドでの採用例を押さえると、素材のイメージが具体化し、購入時の判断がしやすくなります。
「傷に強い=絶対に安心」と思い込まないためにも、ポイントだけでも先に確認しておきましょう。
サファイアガラスは衝撃に強いですが、絶対に傷がつかないわけではありません。
擦り傷には強い一方で、落下して角に当たるなど、力が一点に集中すると欠けたりヒビが入ったりすることがあります。
また、割れるときは大きく全体が砕けることが多く、損傷が目立ちやすいです。
ぶつけやすい作業や運動では着用を避ける、保護ケースを使うなどの対策が必要となります。
傷やヒビが気になるときは自己研磨をせず、早めに修理店へ相談し、普段の手入れは柔らかいクロスで汗や指紋を拭き取る程度にしておきましょう。
素材の特性を理解して丁寧に扱えば、メリットを長く享受できます。
サファイアガラス単体の価格は、大きさにもよりますが数万円からが相場です。
一般的なガラスや樹脂素材と比較すると、かなり高価な素材といえます。
高価になりやすい理由は、2000℃以上の高温で結晶を育てる工程が必要なこと、さらに硬度が高く切削や研磨が難しいため、ダイヤモンド工具やレーザー加工など専用工程が増えるためです。
形状によっても価格は変動し、ドーム型やカーブ型は平面仕上げよりもコストがかかります。
現在のロレックスの風防には、サファイアガラスが使用されています。
ロレックスがサファイアガラスを初めて採用したのは1970年で、クォーツモデル「ベータクォーツ Ref.5100」に搭載されました。
その後、1970年代後半から一部のモデルにも徐々に普及。
現行モデルでは、ほぼすべてにサファイアガラスが採用されており、1999年から2000年台初旬にかけて、偽造防止のための王冠透かしマークが施されるようになりました。
また、ミルガウス(Ref.116400GV)にはロレックスのコーポレートカラーであるグリーンのサファイアガラスが採用されるなど、独自の進化を続けています。
サファイアガラスは、ダイヤモンドに次ぐ硬さを持ち、耐熱性、高い透明度、優れた耐摩耗性を兼ね備えています。
腕時計の風防をはじめ、LED基板やスマートフォンのカメラレンズ、宇宙産業の窓材まで、その用途は多岐にわたっています。
一方で、一点集中の衝撃には弱く割れた際のダメージが大きいという弱点もあり、価格も高めです。
しかし、傷がつきにくく長期間美しさを保てる点を考慮すれば、資産価値のある時計選びにおいて欠かせない要素といえるでしょう。
サファイアガラスの特性を正しく理解することで、自分に合った時計を選ぶ際の判断材料になります。
高級時計の購入を検討している方は、風防の素材にも注目して、納得のいく一本を見つけてください。
- サファイアガラスは高純度アルミナ由来の高硬度風防素材として定番
- モース硬度9で擦り傷に強く、透明感と高級感を保ちやすい
- 耐熱・耐摩耗・耐薬品性も高く、日常の汚れ劣化を抑える
- 一方で一点の衝撃に弱く、落下や角打ちで欠け・破損しやすい
- 高温製造と難加工で高価ですが、形状やAR有無も含めて選ぶと安心

